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2025年05月06日

大きなスケールと濃やかな情感の同居しているブラームス ― 甘美で豊麗なヴァイオリンとチェロのノーブルで格調のある響き

ヴィンテージレコードの醍醐味アナログLP時代のブラームスのヴァイオリンとチェロの二重協奏曲の定番であった名演。

JP COLUMBIA OS136 フランチェスカッティ/フルニエ/ワルター/コロムビア響 ブラームス ヴァイオリンとチェロのための2重協奏曲/悲劇的序曲
JP COLUMBIA OS136
(演奏者)ブルーノ・ワルター指揮 コロムビア交響楽団 ジノ・フランチェスカッティ ピエール・フルニエ
(曲目)ブラームス 二重協奏曲

フランチェスカッティ最円熟期ならではの甘美で豊麗なヴァイオリンの音色で聴かせる鮮やかなブラームスは彼のベスト演奏の一つ。チェロのフルニエのノーブルで格調のある響きなど、共演者にも恵まれた万全の布陣。バックは滋味あふれる品格の高さ、ブルーノ・ワルターがその最晩年に、録音用に特別編成されたコロムビア交響楽団と録音した歴史的名盤です。コロンビア自慢の広がりのある360サウンドも特筆すべき鮮明さである。


80歳で現役を引退後、ワルターから見ると孫の世代のような30歳代のジョン・マックルーアの強引な説得で、彼の意匠をステレオ録音すべく専属のオーケストラ、所謂コロムビア交響楽団が結成され、本セットは1958〜59年に集中的に製作された。その後、彼の死の年まで約5年間にわたり録音プロジェクトが続けられた。ワルターの遺言的産物である。


伝統的な手法による古典派やロマン派音楽解釈の第一人者として、20世紀初頭からなかばにかけてのヨーロッパなどで高く評価されてきたブルーノ・ワルターの演奏は、豊かな情感にあふれたロマンティックな美しさを志向したスタイル。半世紀ものあいだヨーロッパの聴衆を魅了し続けてきたという事実は、演奏史に深く刻まれるものです。


北ドイツの重苦しい冬空を思わせるような重厚な音楽が思い浮かびますが、ブラームスが秋から春のシーズンにおもに仕事をしたのはウィーンであり、夏になるとスイスのチューリッヒやトゥーン、あるいはオーストリアのペルチャッハなどで過ごして作曲を行った。彼の音楽を聞いているとこのアルプス地方からイタリアへの憧れのようなものが、重々しい楽想に光を当てて音楽を魅力的にしている。この曲の第2楽章はアルペンホルン風の出だしの後、しみじみとしたメロディーがアルプスの夕暮れを思い起こさせ、ヴァイオリンにヴィオラが寄り添い、更にヴァイオリン・ソロが花を添える。この作品は当時、ヨアヒムの邪推から険悪となっていたブラームスとヨアヒムの和解をもたらした作品で、初演当時は「和解の協奏曲」とも呼ばれていた。協奏曲と言えば、華麗なソロを聴衆は期待していたわけなのだが、そうしたものには目もくれず、ブラームスは作品優先で仕上げている。聴き終えた後には、ああなんて美しいのだろうと、心を和ませる。


ワルターの為にロサンジェルス・フィルのメンバーや映画スタジオの音楽家などを中心に構成されオーケストラである「コロムビア交響楽団」を指揮した一連の晩年のステレオ録音は、大きなスケールと濃やかな情感の同居しているところに特徴があり、フランチェスカッティとフルニエという大物を迎えた二重協奏曲での大らかな表現などどれも聴きごたえのある演奏ばかり。


米国コロムビアの発祥は1930年に設立されたコロムビア・アーティスツ・マネージメント・インクという会社で、ユダヤ系資本が大株主で音楽界に絶大な力を及ぼしていることについては色々と書かれていることもあり、ユダヤ系のレナード・バーンスタインや同時並行して1950年代後半から引退中だったこれまたユダヤ系のワルターの起用したことは周知の事実。モノーラルからステレオの普及黎明期ということもあり、純粋に彼らの仕事を後世に伝えようとする熱意から発展した。なんであれ、こうして大指揮者の最晩年に多くの美しい録音がモノラル・セッションとステレオ両方とで残されたことは幸いでした。

1959年11月20日&22日録音。名演、名盤。

CDはアマゾンで購入できます。



レコード・ノート

プロダクト

レコード番号
OS136
作曲家
ヨハネス・ブラームス
指揮者
ジノ・フランチェスカッティ ピエール・フルニエ
オーケストラ
コロムビア交響楽団
指揮者
ブルーノ・ワルター
録音種別
STEREO
製盤国
JP(日本)盤

レコードのカバー、レーベル写真

  • JP COLUMBIA OS136 フランチェスカッティ/フルニエ/ワルター/コロムビア響 ブラームス ヴァイオリンとチェロのための2重協奏曲/悲劇的序曲 BRAHMS:CONCERTO FOR VIOLIN&CELLO/TRAGIC OVERTURE
  • JP COLUMBIA OS136 フランチェスカッティ/フルニエ/ワルター/コロムビア響 ブラームス ヴァイオリンとチェロのための2重協奏曲/悲劇的序曲 BRAHMS:CONCERTO FOR VIOLIN&CELLO/TRAGIC OVERTURE
日本コロムビア製, STEREO 1枚組 (160g) 重量盤, 米COLUMBIA同一スタンパー XSM 使用盤.

レーベルガイド
日本コロムビア社社史によると同社クラシック・レコードの歴史は、英コロムビア(EMI)、米コロムビア(CBS)から原盤の供給、それを国内盤として発売して生業立ててきました。当時の日本国内では米英からの供給代理店変更当たり前、例として1960年に東芝音楽工業株式会社が設立され、1962年には英コロムビアとの契約を終了。さらに1968年には、CBSソニーレコード株式会社が設立。同年6月末日をもって、米コロムビアとの原盤供給使用契約が終結。これによって日本コロムビアは、EMIとCBSという二大メジャーレーベルの国内発売権喪失干されてしまいます。二大レーベルを失ったことにより、日本コロムビア社洋楽部門は、必然的に自主制作の道をたどって行くことなります。

  


2025年05月06日

歴史的解釈と現代的解釈を見事に融合 ムーティ ブルスカンティーニ フレーニ ドニゼッティ 歌劇「ドン・パスクワーレ」

抱腹絶倒のギャグ・オペラが歴史を超えて現代に顕現!


CDはアマゾンで購入できます。

声楽というもののテクニックの世界のひとつの頂点が、
ベルカント・オペラだ。
その中でも抱腹絶倒のギャグ・オペラ
が「ドン・パスクワーレ」。
オペラで腹を抱えて笑いたい人は、
ぜひとも楽しんでほしい!

デジタル録音の恩恵で、
キングズウェイ・ホールの美しい響きが、
空気感までも正確に再現されます。

ドン・パスクアーレの茶番に鋭いウィットと穏やかな感情をもたらした名演。

《仏ニュー・ニッパー盤》FR VSM 1434363 ムーティ ドニゼッティ:歌劇「ドン・パスクワーレ」

FR VSM 1434363 ムーティ ドニゼッティ:歌劇「ドン・パスクワーレ」

 新型コロナウイルス感染拡大防止でウィーン・フィルも演奏会の実行に頭を悩ましていました。バイロイト音楽祭は、2020年の開催を中止すると決定。2021年のウィーンから新年を祝う、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートは、史上初めて、無観客でのコンサートとなりました。指揮台に立ったのはリッカルド・ムーティ。
 ウィーンでは、1973年に「アイーダ」を指揮して以来、国立歌劇場の演奏を担当しているウィーン・フィルと良好な関係を維持しています。国立歌劇場総支配人マイヤーも、2008年の「コシ・ファン・トゥッテ」後、疎遠になっているムーティに対して、諸手を挙げて歓迎すると語っています。
 長年ウィーン・フィルがホスト役を担っている夏のザルツブルク音楽祭に、カラヤンの招きに応じて、1971年に「ドン・パスクワーレ」でデビューして以来、親密な関係を築いています。
 2014年9月にローマ歌劇場の終身名誉指揮者を辞任した後、一説にはイタリア大統領に?などというスケールの大きな噂も流れ、何かと話題を提供しているムーティですが、イタリアでは、自らが創始したルイジ・ケルビーニ・ジョバニーレ管弦楽団での後進の育成に専念し、イタリア歌劇場のいかなるポストにも就かないと断言しました。すでにフィレンツェで12年間、ミラノで19年間、歌劇場で重要なポストに就いていたことを考えると、〝帝王〟とファンが呼び崇めるのも納得がいきます。

オペラで腹を抱えて笑いたい人は、ぜひとも楽しんでほしい。

 声楽というもののテクニックの世界のひとつの頂点が、ベルカント・オペラだ。ベルカント・オペラというのは、音楽がワーグナーなどのようには凝っていないので、キャストが良くないとなんにも面白くないが、その中でも抱腹絶倒のギャグ・オペラが「ドン・パスクワーレ」。
 ムーティ自身、私のザルツブルク音楽祭でのオペラデビューは、1971年のドニゼッティ《ドン・パスクワーレ》の成功ででした。と、35年経った2006年に振り返り語っていたほどの自信作だけに、本盤のキャスティングは文句ない。
 歴史的解釈と現代的解釈を見事に融合させるために、それぞれに適した歌手らを起用。特にマラテスタ役のバリトン、レオ・ヌッチの美声には当時から魅せられているし、タイトルロールのドン・パスクワーレ役には、1947年にイタリア放送協会主催の声楽コンクールで優勝し、ミラノ・スカラ座をはじめとするイタリア各地の歌劇場に登場し、1951年にはグラインドボーン音楽祭、1952年にはザルツブルク音楽祭に出演して話題を呼んだ大ベテランのバス歌手、セスト・ブルスカンティーニが貫禄を見せている。
 1979~1980年のシーズンに合衆国でツアーをしていた直後のインタビューで指揮者はしばしば演出家と衝突します。モーツァルトやヴェルディ、ワーグナーのような作曲家の作品に「内在する」、「音楽にのっとった演出」からあまりに遠くかけ離れているからです。と話していたムーティ。舞台に煩わされないレコードだからムーティも思う存分、彼の音楽美学を発揮。精度、輝きと整合性のために、ドン・パスクアーレの茶番に鋭いウィットと穏やかな感情をもたらした名演です。オペラで腹を抱えて笑いたい人は、ぜひとも楽しんでほしい。
1982年7月ロンドン、キングズウェイ・ホール、ブックレット付属。
自家薬籠中の名作
ムーティがEMIに録音した、一連のイタリア・オペラ名作シリーズ。ミレッラ・フレーニ、セスト・ブルスカンティーニ、レオ・ヌッチと当時最高のイタリア歌手をロンドンに招聘してセッション録音されました。デジタル録音の恩恵で、キングズウェイ・ホールの美しい響きが空気感までも正確に再現されます。
 ロッシーニ、ベッリーニとドニゼッティの3人は、19世紀前半のイタリアオペラを代表する作曲家としてベルカントオペラの全盛期をリードしました。その中でガエターノ・ドニゼッティ(Gaetano Donizetti/1797年-1848年)は『愛の妙薬』『連隊の娘』『ドンパスクワーレ』などの喜劇的なオペラを書く一方で、『アンナ・ボレーナ』『ルクレツィア・ボルジア』『ランメルモールのルチア』などの悲劇的なオペラも遺しました。
 19世紀初頭のオペラ・ブッファ(喜劇的オペラ)は、『セビリアの理髪師』もそうですが、年配の金持ち男が若い娘に手を出し、彼女とその恋人、彼らの恋の成就を助ける知恵者の三人にコテンパにやられるという物語が結構存在します。70歳の資産家が若い娘と結婚しようとして痛い目に会う、ドニゼッティが晩年に作曲した傑作『ドン・パスクワーレ(Don Paspuale)』も同じ系統といえるでしょう。台本はジョヴァンニ・ルッフィーニが急いで書いたものを、ドニゼッティ自身が手を加えて完成したとされています。

抱腹絶倒の結婚大作戦!綺羅星のごとき歌手が繰り広げるオペラ・ブッファ

 ドン・パスクワーレは資産家ですが、頑固な70歳。日頃から、医師のマラテスタは彼を訝しく思っていました。そんな二人の間で若い恋人同士が翻弄させられるドタバタ劇。彼は、甥のエルネストに「遺産を譲るから、縁談を受けてくれ」を勧めています。しかし、エルネストは「恋人(ノリーナ)がいるから縁談は受けられない」と断ります。
 甥エルネストとノリーナの結婚をマラテスタがお膳立てしようとしていることを知ったパスクワーレが、一行に一泡ふかさようとして逆に策略にはまり、「エルネストとノリーナの結婚が認められた」ところでハッピーエンドで幕となる、誰かが悪役という立場でもない物語。
 主人公と母親との思い出をぶち壊しにするノリーナと、主人公の主治医マラテスタとの関係も何か怪しいし、彼女の恋人でドン・パスクワーレの甥エルネストは「甥っ子は役立たず、ご老人の悩みの種」と合唱で歌われるようにボーっと生きている。そして主人公のドン・パスクワーレが彼らにもまして、70歳なのに子供のまま。過去の思い出にしがみつく、こんな人たち、現実にいるよね。と呟きたくなる。リアルな登場人物たちの『ドン・パスクワーレ』は現代につながる身近な要素も満載で、1843年にパリで初演されて以来、エイジハラスメント的なところが内容から伺われても、ドニゼッティ作曲の美しい音楽と共に、今なお世界中で愛されています。

レコード詳細

プロダクト

Mirella Freni, Sesto Bruscantini, Leo Nucci ∙ Gösta Winbergh, Riccardo Muti ‎– Donizetti, Don Pasquale
  1. 演奏者:
    1. ミレッラ・フレーニ
    2. セスト・ブルスカンティーニ
    3. レオ・ヌッチ
    4. イェスタ・ヴィンベルイ
  2. オーケストラ:
    1. フィルハーモニア管弦楽団
    2. アンブロジアン・シンガーズ
  3. 指揮者:
  4. リッカルド・ムーティ
  5. 作曲家:
  6. ガエターノ・ドニゼッティ
  7. 曲目:
  8. 歌劇「ドン・パスクワーレ」
  9. 録音時期:
  10. 1982年7月
  11. 録音場所:
  12. ロンドン、キングズウェイ・ホール
  13. レーベル:
  14. VSM
  15. レコード番号:
  16. 1434363
  17. 録音種別:
  18. STEREO
  19. 製盤国:
  20. FR(フランス)盤
  21. カルテ:
  22. NEW NIPPER, STEREO DIGITAL 2枚組 (110g/105g)、ブックレット付属。

ヴィンテージレコードのカバー、レーベル写真


  1. FR VSM 1434363 ムーティ ドニゼッティ:歌劇「ドン・パスクワーレ」
  2. FR VSM 1434363 ムーティ ドニゼッティ:歌劇「ドン・パスクワーレ」

  3. FR VSM 1434363 ムーティ ドニゼッティ:歌劇「ドン・パスクワーレ」

NEW NIPPER)は1980年代中ごろからの、主にデジタル録音主体の時代のレーベルは、ステレオ初期の「セミサークル」に似たデザインのものになります。これが、EMIの最後期のレーベルデザインとなります。

  


2025年05月06日

モダン楽器のよさを満喫◉ミュンヒンガー指揮シュトゥットガルト室内管 バッハ・ブランデンブルク協奏曲 第3&5番

ドイツの伝統を踏まえたバロック音楽の演奏としては無視できない内容だ。

GB DECCA SWL8001 ミュンヒンガー バッハ・ブランデンブルク協奏曲3,5番

ブランデンブルク協奏曲第5番は第1楽章のフルートに柔らかく暖かい弦がらみながらのゆったりとした流れに、この曲の良さを実感します。
 第2楽章での、フルートの寂寥感に暖かいヴァイオリンのコントラスト、支えるチェンバロのトリオが味わい深く、そして、第3楽章の非常に明快なフーガが展開されていく様子は聴いていて実に心地よいです。
 ミュンヒンガーの《ブランデンブルク協奏曲》は、しっかりとした音の輪郭、そして弦楽器のつやのある音色。それに手ごたえのある音のアンサンブルが、何よりも心地よく響いてくる。
  • GB DECCA SWL8001 ミュンヒンガー バッハ・ブランデンブルク協奏曲3,5番
  • このミュンヒンガーの演奏はバロック音楽が大人気になるきっかっけを作ったとして有名、非常にリズムがしっかりしており、骨太でな音楽です。たっぷりの安定感で、ひたすらしっかりとしています。まるで、ずっしりとした大木がぐいっとパワフルに生えているような、ゆるぎのない素晴らしい演奏となっています。
また、弦楽パートを中心とした楽器の音色は、かなり明るめで、加えて、この演奏にはそれほどの深刻さがありません。つまり、音楽を聴いて何かを深く考えてしまうということとは無縁の演奏のタイプです。
言い換えればミュンヒンガーの《ブランデンブルク協奏曲》は非常にかっちりとしたスキの無い、安定感に満ちた演奏。そして、それほど心に響くようなものではなく、それでいて各楽器は極めて美しく鳴り響いていて素晴らしい。
 素晴らしく美しく響いている。これが物足りないようなときもありますが、それでもいつの間にかバッハの世界に浸りこむことには抵抗の出来ない魅力の力でしょう。
(1) record date:1958年10月
(2) record session:ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール
(3) p&e:ジェームズ・ウォーカー
(4) addition:優秀録音、名盤

通販レコード詳細・コンディション、価格

プロダクト

品番
22206
商品名
GB DECCA SWL8001 ミュンヒンガー バッハ・ブランデンブルク協奏曲3,5番
レコード番号
SWL8001
作曲家
ヨハン・セバスティアン・バッハ
オーケストラ
シュトゥットガルト室内管弦楽団
指揮者
カール・ミュンヒンガー
録音種別
STEREO

販売レコードのカバー、レーベル写真

GB DECCA SWL8001 ミュンヒンガー バッハ・ブランデンブルク協奏曲3,5番
GB DECCA SWL8001 ミュンヒンガー バッハ・ブランデンブルク協奏曲3,5番

"ORIGINAL RECORDING BY THE DECCA"WIDE BAND WITH GROOVED ED1, STEREO (80g)10inch盤, Release 1959, Stamper 2M/2M。

コンディション

ジャケット状態
EX
レコード状態
EX++
製盤国
GB(イギリス)盤

現代的な感覚に裏打ちされた整然たる演奏で、その骨格のしっかりした造形の美しさと緻密なアンサンブルは抜群のものである。1958年10月の音響の良いヴィクトリア・ホールでの録音。独奏者にクロツィンガー(ヴァイオリン)、コッホ、アゾネ(ヴィオラ)、ヴァルヒャ(チェロ)、グラス、フルードリッヒ・メス(フルート)、レヒナー(ハープシコード)。

通販レコード

詳細の確認、購入手続きは品番のリンクから行えます。
  • オーダー番号22206
  • 通常価格3,850円(税込)

プライバシーに配慮し、会員登録なしで商品をご購入いただけます。梱包には無地のダンボールを使用し、伝票に記載される内容はお客様でご指定可能です。郵便局留めや運送会社営業所留めの発送にも対応しております。
入手のメインルートは、英国とフランスのコレクターからですが、その膨大な在庫から厳選した1枚1枚を大切に扱い、専任のスタッフがオペラなどセット物含む登録商品全てを、英国 KEITH MONKS 社製マシンで洗浄し、当時の放送局グレードの機材で入念且つ客観的にグレーディングを行っております。明確な情報の中から「お客様には安心してお買い物して頂ける中古レコードショップ」をモットーに運営しております。

  


Posted by WoodStockR at 06:30Comments(0)通販レコードバロック管弦楽曲

2025年05月06日

親しみ易さと気取りのなさには達者なヴィオラがいないとつまらない《アメリカ》カルテット〜クラシック名曲ガイド、これを聞け

稀代のメロディー・メーカー ドヴォルザーク〜100人の大作曲家たち[46]

Antonín Leopold Dvořák

あいつが屑籠に捨てたメロディーだけで交響曲を一曲書ける ― ブラームス

(1841.9.8 〜 1904.5.1、チェコ)

Antonín Leopold Dvořák 肉屋と宿屋を兼ねた家に長男として生まれた。首都プラハの音楽学校を卒業後、歌劇場でヴィオラを弾いていたが先輩の作曲家スメタナに見出され作曲を始めるようになった。やがてその作品がブラームスに認められて名声が上がり、1891年プラハ音楽院の作曲家教授に就任。翌年、ニューヨークの国民音楽院に校長として招聘された。3年間のアメリカ滞在中、ニグロの民族音楽とボヘミアの郷土音楽との融合をはかって傑作、交響曲《新世界より》を書いた。

彼はスメタナの遺産を受け継ぎ、この国の国民音楽を世界的にしたがドイツ音楽、ことにブラームスの影響を受け大規模な絶対音楽を多く書いた。器楽の面で名作が多く「交響曲第8番」,「チェロ協奏曲」,「スラブ舞曲」、弦楽四重奏曲「アメリカ」,それに「ユーモレスク」などが有名である。

弦楽四重奏曲 第6番 ヘ長調 作品96《アメリカ》

DE  EMI  ASD3694 メディチSQ  ドヴォルザーク・ア… ドヴォルザークは、1892年(51歳)に渡米し、約2年間、ニューヨーク国民音楽院の初代校長としての責務を果たした。そしてその間に、「交響曲 第9番《新世界より》」、「チェロ協奏曲」、「弦楽四重奏曲第6番」《アメリカ》といった名作を相次いで生んだのだった。
 ドヴォルザークの作曲した弦楽四重奏曲は、作品番号のないものまで含めると全部で13曲もあるが、その中では、この「第6番」《アメリカ》が抜きん出て優れている。わずか15日という短期間に作曲されたこの曲は、黒人霊歌を思わせるような旋律が使われているので、昔は《ニガー》(二グロの蔑称)と呼ばれていたが、人種問題のやかましい今日では、この名称は使われない。
FR VSM CVB2013 スメタナSQ ドヴォルザーク・アメリカ ドヴォルザークの弦楽四重奏曲はいい曲があるのですが、不思議なことにあまり演奏されません。全部で13曲のうち、せいぜい2番から8番くらいまでの曲しか演奏されず、その中でも6番目に当たる《アメリカ》は、圧倒的に数多く演奏されています。アメリカに滞在中に書いた最も有名な三曲中の一曲です。1893年の夏、ドヴォルザークの故郷であるボヘミアからの移民の集まっていた秋穂阿州のスピルヴィルという村で、夏の間に作曲された。昔はこのヘ長調のクヮルテットをよく《ニガー》というニックネームをつけて呼んでいました。これは黒人霊歌に似た旋律がたくさん現れることからつけられたものと思われますが、今ではもっぱら《アメリカ》の愛称が用いられるようになりました。そもそも NIGGER という言葉は、戦争中にアメリカ兵たちに使われた JAP と同類で軽蔑の気持ちが込められており、私たち日本人やヨーロッパの人たちは感じなくても、黒人たちにとっては耐えられない嫌な言葉らしい。最近では黒人暴動が相次いで起き、人種問題にはとりわけ敏感なアメリカでは、NEGRO という言葉すら蔑意が含まれているとして気を使うくらいですから、人種問題とは何の関わりもないドヴォルザークのクヮルテットに、黒人霊歌に似ているというだけの理由で《ニガー》などという危険な別名をつける必要はさらさらないわけです。

達者なヴィオラがいないとつまらない。

 それにしてもこのクヮルテットは、いうにいわれぬ独特な魅力を秘めています。

鑑賞のポイント

 第1楽章アレグロ・マ・ノン・トロッポ、第2楽章レント、第3楽章モルト・ヴィヴァーチェ、第4楽章ヴィヴァーチェ・マ・ノン・トロッポ。全体に民族的色彩が強く、親しみやすい旋律が豊富に使われているのが大きな特徴で、とくに、おおらかな気分の第1楽章と、感傷的な民謡調の旋律の美しい第2楽章は、間違いなく感動を誘う楽章である。

 まず冒頭、2小節の伴奏的音形にのっていきなりヴィオラがドヴォルザーク節と言えるようなアレグロの主題を弾き始めるのですが、低いC線から始まるヴィオラの鼻にかかったような哀愁のある音色は、実に鮮烈な印象を与える効果を持っています。

GB DEC  SDD250 ヤナーチェクSQ ドヴォルザーク・弦楽… このヴィオラという楽器は、弦楽器群の中では役回りからいって内声部担当ですから、いわば縁の下の力持ちみたいなもので、日頃は目立たぬ存在です。弦楽器を女性に例えれば、ヴァイオリンは派手なお嬢さん、チェロは雄弁ななんとか女史、それに対してヴィオラはさしずめ結婚して何年目かの世話女房、普段は割烹着か何かを着込んでもっぱら亭主の飯を作り、洗濯に明け暮れている女房が、突然ある日、見るも鮮やかな洋服を着こなし、色気を振りまきながらしゃなりしゃなりとネオン・ストリートに現れ出でて、彼女を知る男どもをびっくり仰天させるような効果を、この曲の冒頭は持っています。
 ヴィオラ奏者が女性だったりすると、この印象はさらに強烈なものになります。

鑑賞のすすめ

 ヤナーチェク弦楽四重奏団盤は、この曲の持つ民族的情緒を洗練させた完成度。スメタナ盤は、民族的な共感密度の高い演奏で、アンサンブルも完璧だ。録音はスメタナ盤の方がやや良い。