› 並木通りの音楽ヤ › 2025年01月29日

2025年01月29日

♣母との思い出を増やすコロナ禍 ― アナログレコードの文化を守る OYAG SOUND 店主のノート

車椅子 ― 南野勝

 私と同居する母は今年89歳になる、父は10年以上前に亡くなった。
 その母も数年前に脳梗塞を患い後遺症で杖が必要になった。それからは認知症も進んだ気がする。
 今は介護施設のディサービスに通い穏やかに過ごしているが、ディサービスに行くことを学校に行くと言う。
 時々今日は遠足だと嬉しそうに話し、天気の悪い日は遠足があるのにと残念がる。
はて、そんなに遠足が続くのか?
OYAG SOUND
ケアマネジャー訪問日にその話題をすると、以前は天気の良い日に施設の職員が近所の公園に連れて行くということがあったようだが、このコロナ禍でもう一年以上そういうことは行っていないそうである。
きっと退屈でディサービスの日を遠足と思い込んでいるのだろう。
何か可哀想な気がしてどこかに連れて行ってあげようと思うのだが、母を歩かせるとやはり足が頼りなく、転倒すると骨折の心配がある。
ケアマネジャーに相談したところ車椅子のレンタルができるそうだ、なるほどそういういきさつでみんな車椅子を借りることになるのか、と腑に落ちる。
さっそくお願いして車椅子を玄関口に置いてみる。

母は誰の車椅子だ、と人ごとのように言う。
「お母さんのだよ」、と説明してもピンとこないようで、私はそんなものは必要ないと言う。
自分は何でもできると思っている節があるがそれが危ない。
嫌がる母を説得して乗ってもらい近所を一回りしてみた。
おそらく母はここ2年ほどこの風景を見ていないはずで、感想を聞いてみると「さあ・・・」というが、その表情は明るい。

翌日。玄関の車椅子を見つけて、やはり誰のだと聞いてきた。また昨日と同じやり取りがあった。

もう桜の季節である。
おそらく母は桜を見ても翌日まで覚えていないだろう、それも良いかと思う。
そうやって母との思い出を増やすコロナ禍である。
令和3年3月 オヤッグ店主

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Posted by WoodStockR at 21:30Comments(0)新型コロナウイルスOYAG SOUND

2025年01月29日

2025年01月29日

ピアノが好きな人なら是非とも持っておくべき一枚◉ウラディーミル・ホロヴィッツ◯ホロヴィッツ・イン・モスコー

ピアノは無機的な楽器であるために、奏者の人となりがよく音に現れます。年齢を感じさせない男性ピアニストの魅力をもろに出したような凄まじい大音響に驚嘆する。ピアノを弾くというのは、こういうことかとも思う。

ヴィンテージ・レコードのご紹介《ブルーライン盤》DE DGG 419 499-1 ホロヴィッツ HOROWITZ IN MOSCOW

巨匠ホロヴィッツが約60年ぶりに祖国ロシアへ帰国、モスクワで開いたリサイタル・ライヴ。時に82歳の「ヒビの入った骨董」。
昔の家族との生活やラフマニノフの思い出を振り返ったり、コンサートの合間にスクリャービンの娘と対面しエチュードを演奏するなどしたことが、演奏を貴重なドキュメントにとどまらない豊かな音楽と変えている。
ホロヴィッツを聴いていていつも思うことだが、フォルテよりもピアノ、特に最弱音をどうしてこんなに美しく、鮮明に、絶妙の音色とコントロールで出すことができるのか。
  • レコード盤に針をおろして最初のスカルラッティが鳴りだすと同時に、ああ、やっぱりホロヴィッツの音だと実感する。少し鼻にかかったホロヴィッツの音色。「モーツァルトはロマン派のように弾き、ショパンは古典派のように弾く」という彼の言葉通り、甘くロマンティックなモーツァルト。続くスクリャービンは絶品である。
  • DE DGG 419 499-1 ホロヴィッツ HOROWITZ IN MOSCOW
  • DE DGG 419 499-1 ホロヴィッツ HOROWITZ IN MOSCOW
  • DE DGG 419 499-1 ホロヴィッツ HOROWITZ IN MOSCOW
  • 10本の指から、まるでオーケストラのように色鮮やかに変幻する極彩色の音色が紡がれ、良い意味で聴き手の予測を裏切る音楽に否応なしに惹き込まれてしまう。デジタル・ステレオ、ライヴ録音。
  • DE DGG 419 499-1 ホロヴィッツ HOROWITZ IN MOSCOW

ヴィンテージレコード詳細

プロダクト

  1. アルバムタイトル
    DE DGG 419 499-1 ホロヴィッツ HOROWITZ IN MOSCOW
  2. レコード番号
    419 499-1
  3. 作曲家
    1. ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
    2. セルゲイ・ラフマニノフ
    3. アレクサンドル・スクリャービン
    4. フランツ・リスト
    5. ドメニコ・スカルラッティ
    6. ロベルト・シューマン
  4. 演奏者
    ウラディミール・ホロヴィッツ
  5. 録音種別
    STEREO DIGITAL

CDはamazonで購入できます。

モスクワ・ライヴ1986 (SHM-CD)
ヴラディーミル・ホロヴィッツ
Universal Music
2023-05-17

1986年4月、モスクワ音楽院でのライヴ録音となります。
1. ソナタ ホ長調K.380(D.スカルラッティ)
2. ピアノ・ソナタ第10番ハ長調K.330(モーツァルト)
3. 前奏曲ト長調op.32-5(ラフマニノフ)
4. 前奏曲嬰ト短調op.32-12(ラフマニノフ)
5. 練習曲嬰ハ短調op.2-1(スクリャービン)
6. 練習曲嬰ニ短調op.8-12(スクリャービン)
7. ヴァルス・カプリス第6番 ウィーンの夜会(シューベルト/リスト編)
8. 巡礼の年第2年「イタリア」~ペトラルカのソネット第104番(リスト)
9. マズルカ嬰ハ短調op.30-4(ショパン)
10. マズルカへ短調op.7-3(ショパン)
11. 「子供の情景」~トロイメライ(シューマン)
12. 花火op.36-6(モシュコフスキ)
13. W.R.のポルカ(ラフマニノフ)
デジタル・ステレオ、ライヴ録音。

コンディション

  1. ジャケット状態
    M-
  2. レコード状態
    EX
  3. 製盤国
    DE(ドイツ)盤
BLUE LINE, STEREO DIGITAL(120g), Release 1986。

ヴィンテージレコード専門店に扱いがあります。

詳細の確認、特別価格での購入手続きは品番のリンクから行えます。
  • 品番14448
  • 特別価格2,640円(税込)
  • 通常価格3,300円(税込)

詳細の確認、購入手続きは品番のリンクから行えます。
プライバシーに配慮し、会員登録なしで商品をご購入いただけます。梱包には無地のダンボールを使用し、伝票に記載される内容はお客様でご指定可能です。郵便局留めや運送会社営業所留めの発送にも対応しております。
入手のメインルートは、英国とフランスのコレクターからですが、その膨大な在庫から厳選した1枚1枚を大切に扱い、専任のスタッフがオペラなどセット物含む登録商品全てを、英国 KEITH MONKS 社製マシンで洗浄し、当時の放送局グレードの機材で入念且つ客観的にグレーディングを行っております。明確な情報の中から「お客様には安心してお買い物して頂ける中古レコードショップ」をモットーに運営しております。

  


2025年01月29日

親しみ易さと気取りのなさには達者なヴィオラがいないとつまらない《アメリカ》カルテット〜クラシック名曲ガイド、これを聞け

稀代のメロディー・メーカー ドヴォルザーク〜100人の大作曲家たち[46]

Antonín Leopold Dvořák

あいつが屑籠に捨てたメロディーだけで交響曲を一曲書ける ― ブラームス

(1841.9.8 〜 1904.5.1、チェコ)

Antonín Leopold Dvořák 肉屋と宿屋を兼ねた家に長男として生まれた。首都プラハの音楽学校を卒業後、歌劇場でヴィオラを弾いていたが先輩の作曲家スメタナに見出され作曲を始めるようになった。やがてその作品がブラームスに認められて名声が上がり、1891年プラハ音楽院の作曲家教授に就任。翌年、ニューヨークの国民音楽院に校長として招聘された。3年間のアメリカ滞在中、ニグロの民族音楽とボヘミアの郷土音楽との融合をはかって傑作、交響曲《新世界より》を書いた。

彼はスメタナの遺産を受け継ぎ、この国の国民音楽を世界的にしたがドイツ音楽、ことにブラームスの影響を受け大規模な絶対音楽を多く書いた。器楽の面で名作が多く「交響曲第8番」,「チェロ協奏曲」,「スラブ舞曲」、弦楽四重奏曲「アメリカ」,それに「ユーモレスク」などが有名である。

弦楽四重奏曲 第6番 ヘ長調 作品96《アメリカ》

DE  EMI  ASD3694 メディチSQ  ドヴォルザーク・ア… ドヴォルザークは、1892年(51歳)に渡米し、約2年間、ニューヨーク国民音楽院の初代校長としての責務を果たした。そしてその間に、「交響曲 第9番《新世界より》」、「チェロ協奏曲」、「弦楽四重奏曲第6番」《アメリカ》といった名作を相次いで生んだのだった。
 ドヴォルザークの作曲した弦楽四重奏曲は、作品番号のないものまで含めると全部で13曲もあるが、その中では、この「第6番」《アメリカ》が抜きん出て優れている。わずか15日という短期間に作曲されたこの曲は、黒人霊歌を思わせるような旋律が使われているので、昔は《ニガー》(二グロの蔑称)と呼ばれていたが、人種問題のやかましい今日では、この名称は使われない。
FR VSM CVB2013 スメタナSQ ドヴォルザーク・アメリカ ドヴォルザークの弦楽四重奏曲はいい曲があるのですが、不思議なことにあまり演奏されません。全部で13曲のうち、せいぜい2番から8番くらいまでの曲しか演奏されず、その中でも6番目に当たる《アメリカ》は、圧倒的に数多く演奏されています。アメリカに滞在中に書いた最も有名な三曲中の一曲です。1893年の夏、ドヴォルザークの故郷であるボヘミアからの移民の集まっていた秋穂阿州のスピルヴィルという村で、夏の間に作曲された。昔はこのヘ長調のクヮルテットをよく《ニガー》というニックネームをつけて呼んでいました。これは黒人霊歌に似た旋律がたくさん現れることからつけられたものと思われますが、今ではもっぱら《アメリカ》の愛称が用いられるようになりました。そもそも NIGGER という言葉は、戦争中にアメリカ兵たちに使われた JAP と同類で軽蔑の気持ちが込められており、私たち日本人やヨーロッパの人たちは感じなくても、黒人たちにとっては耐えられない嫌な言葉らしい。最近では黒人暴動が相次いで起き、人種問題にはとりわけ敏感なアメリカでは、NEGRO という言葉すら蔑意が含まれているとして気を使うくらいですから、人種問題とは何の関わりもないドヴォルザークのクヮルテットに、黒人霊歌に似ているというだけの理由で《ニガー》などという危険な別名をつける必要はさらさらないわけです。

達者なヴィオラがいないとつまらない。

 それにしてもこのクヮルテットは、いうにいわれぬ独特な魅力を秘めています。

鑑賞のポイント

 第1楽章アレグロ・マ・ノン・トロッポ、第2楽章レント、第3楽章モルト・ヴィヴァーチェ、第4楽章ヴィヴァーチェ・マ・ノン・トロッポ。全体に民族的色彩が強く、親しみやすい旋律が豊富に使われているのが大きな特徴で、とくに、おおらかな気分の第1楽章と、感傷的な民謡調の旋律の美しい第2楽章は、間違いなく感動を誘う楽章である。

 まず冒頭、2小節の伴奏的音形にのっていきなりヴィオラがドヴォルザーク節と言えるようなアレグロの主題を弾き始めるのですが、低いC線から始まるヴィオラの鼻にかかったような哀愁のある音色は、実に鮮烈な印象を与える効果を持っています。

GB DEC  SDD250 ヤナーチェクSQ ドヴォルザーク・弦楽… このヴィオラという楽器は、弦楽器群の中では役回りからいって内声部担当ですから、いわば縁の下の力持ちみたいなもので、日頃は目立たぬ存在です。弦楽器を女性に例えれば、ヴァイオリンは派手なお嬢さん、チェロは雄弁ななんとか女史、それに対してヴィオラはさしずめ結婚して何年目かの世話女房、普段は割烹着か何かを着込んでもっぱら亭主の飯を作り、洗濯に明け暮れている女房が、突然ある日、見るも鮮やかな洋服を着こなし、色気を振りまきながらしゃなりしゃなりとネオン・ストリートに現れ出でて、彼女を知る男どもをびっくり仰天させるような効果を、この曲の冒頭は持っています。
 ヴィオラ奏者が女性だったりすると、この印象はさらに強烈なものになります。

鑑賞のすすめ

 ヤナーチェク弦楽四重奏団盤は、この曲の持つ民族的情緒を洗練させた完成度。スメタナ盤は、民族的な共感密度の高い演奏で、アンサンブルも完璧だ。録音はスメタナ盤の方がやや良い。